あらすじ
個を優先するか集団を優先するかのはざまに揺れる少数派の物語
主人公・セレーナはイタリアの有名な女性建築家
あらゆる国で成功を収めるバリバリのキャリアウーマンだが、祖国への郷愁も少しありつつかつ逆転の発想ということで、今はもうあまり勢いのないロンドンへ帰る
ロンドンへ帰ってからは鳴かず飛ばずで、アルバイトばかりの毎日になってしまう
そんな中見つけたチャンスが公営住宅の改装案の募集
古びた治安の悪い公営住宅を徹底して調査して、設計を練るセレーナ
それを携えていざ面接に出向くと女性は妊娠したら退職であったりと男尊女卑な感じ
(おそらくイタリア全体的に割とこんな感じっぽい描写)
不利な状況をどうしても作りたくなかったセレーナは自分を秘書という立場と偽り、
セレーナ本人は最近同居を始めたゲイの同居人の男・フランチェスコであるという嘘をとっさについてしまう
それがフランチェスコにバレてからはフランチェスコにリモート会議の出席に参加してもらったりと無理を言って色々協力してもらう
その代わりにフランチェスコと不仲な息子(ゲイを隠して結婚していた元妻との息子)の世話を一緒にすることになる
セレーナは見事に面接を通過し、設計士としてメンバーに立つがセレーナのウソが次第にバレていく
そんな中、会社の人たちは実は会社への隠し事がある人が多いということが分かってくる
フランチェスコのようにゲイを隠している社員や、妊娠を隠している社員、また社長への服従を嫌々行っている補佐の女性社員などなど
セレーナは一度補佐の女性社員にそんなに従属する必要は無いと歯向かうが、あしらわれる
セレーナが真の性別を偽って秘書として働いていることが社長にバレたときに、社長は業界で働けなくしてやるとまで怒りをあらわにする
しかし次の日会社に来た社長は今までの接待がすべてなくなり、皆隠し事をあらわにして今まで嫌々従属していたという態度を明らかにするのを屈辱ながらも受け入れるしかない状況を目の当たりにする
セレーナは実質お飾りと化していた社長を尻目に、それ以外の社員の信頼を集めて無事にプロジェクトを遂行まで導くのであった
ちなみにフランチェスコとは案の定性的嗜好が合わず親友関係にとどまったが、セレーナはちゃっかり会社で魅力のある男性を見つけてうまく行く
フランチェスコも息子にゲイだということをいつの間にか理解されていて、わだかまりが無くなり和解する
感想
一番感動するのが社員みんなが抑圧を受けていた社長を裏切ってセレーナの味方をするシーンで、観客として気が付かなかった妊娠している社員や女好きと言われていたが実はゲイの社員などが正体をあらわにするシーン
日本も割とまだこんな感じだと思うが、性別や性的嗜好などのマイノリティが抑圧されていたり、社長などの権力者にひれ伏さざるを得ない状況を同じ悩みを抱えていた主人公の影響で打開できたというのが感動ポイントだった
観客として自分も組織の常識に合わせて自分を隠していたことがたくさんあったので、こういう悩みを抱えた仲間が実はこんな風にたくさんいるのかもしれないと思えた良い作品だった
シナリオの展開としても、恋人と思っていたフランチェスコが実は女性は対象外だったりと意外な展開が面白く、しかもそれが最後の感動につながるのがとても良かった
イタリアと日本では常識が違うところも多く、主人公がどう感じるのか正直日本人の自分には分からないところがたまにあったが、主演の女優さんがその機微をうまく表情で伝えてくれたのでそれが物語をすんなり受け入れられる大きな要素になっていると思った